
●製作手記 八王子城跡の霊魂(06/3/11〜3/25配信)
3月某日、JR高尾駅。予定よりも早く到着した私は、まず初めに携帯電話に目をやった。
投稿者のHさんからの連絡はまだ来ていない。
さて、この持て余した時間をどうしようかと、私は事の顛末を整理することにした……。
心霊寫眞舘71回目の配信は、著名な心霊スポット「八王子城跡」で撮影された奇妙な写真を取り上げた。暗闇に浮かぶ人影がとても陰鬱で、編集している最中にも気味が悪くなり、何度もその手が止まったものだ。
だが、本当の悪寒が走ったのはその後だった。
配信直後は特に視聴者からのメールが殺到するが、ある一通の件名が特に目を引いた。
「私の写真にも!八王子城跡の霊魂!」
著名なスポットとは聞いていたが、やはり……
添付された写真を展開すると、これが一層不気味な顔が写り込んでいるグロテスクな写真であった。まるで川に焼きこまれた様な顔の目は窪み、半開きの口が何かを訴えている様に見える。とりあえず、この写真を、八王子城跡を、このまま放置するわけにはいくまい


続編として72回目を制作することにし、参考意見を伺う為、前回八王子城跡の写真を送っていただいたHさんにメールを出した。
私「Hさんの投稿が波紋を広げています。配信直後から八王子城跡で撮られた心霊写真、霊的な体験談も幾つか送られてきています。宜しければ、この写真を撮られた経緯を教えていただけませんか?」
Hさん「見ていただきありがとうございます。
僕は霊感とかあるわけではないんですが、地元では有名な心霊スポットだったので肝試しのつもりで遊びに行ったんです。昔から亡くなった兵士の雄叫びが聞こえるとか、女の霊が見えるとか言われている場所です。実際に友達の話では、霊感のある奴がゲーゲー吐いてしまったり寝込んでしまったなど、嫌な噂が結構あるんです。」
私「いざ行ってみて、実際に八王子城跡で写真を撮影された印象はどうでしたか?」
Hさん「これが……
正直そんな噂を馬鹿にしていた感もあったので、遊び半分で行ってみたんですけど。城跡の奥へ奥へと、入っていくうちに頭が痛くなってきたような、気分が重くなってきまして。
なんというか、味わったことのない不快な気持ちでした。口の中が渇いたような、誰かに終始見られているような、視線をずーと感じていましたね。
ああこれ本気でヤバイなあと思って、直ぐに写真を何枚か撮って帰りました。」
私「視線と言うのは、人の気配のようなものですか?もう少し詳しく教えてください」
Hさん「そうですね、人の気配のような違和感ですね。周りに誰もいないはずなのに。感じるんですよ……それが怖いんです。霊感があったという試しは今まで一度もありませんでしたが、あの八王子城跡はやばいですよ。やっぱり実際に行かなければ感じませんよ、あの嫌な雰囲気は……」
Hさんとのメールのやり取りの間にも、続々と視聴者から送られてくる八王子城跡に対しての反響メール。
私は戸惑っていた。八王子城跡を脅威に感じていた。
だが、Hさんの「実際に行かなければ分からない」とのメールに背中を押されたような……
私はHさんにメールを送った……
私「Hさんの撮られた写真を基に、八王子城跡の追跡取材を行いたいと思います。出来れば、Hさんも現地に一緒に行ってもらえないでしょうか?どのような場所で撮影されたかを含め検証していきたいと考えています。」
Hさん「分かりました。一緒に行かせてください。あの八王子城跡特有の、違和感、視線を調査していただけるなら、ぜひ協力させてください!」
現地へ足を運ぶことを躊躇したのが思い出される。
しかし携帯に転送されたそのやり取りを見ると、非常に興奮したHさんの様子が伺え、私は少し可笑しくなったりもした。そして、メールの画面に電話の着信表示。電話主はHさん。「待ち合わせの場所に到着した」とのこと。
私は意を決して、その場所へと足を進めたのであった。



第74回・八王子城跡の霊魂を無料配信!
(約1.5MB)
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